我が国は米国の支配方独立できるのか? ―国防軍の創設には10年かかる

北朝鮮人民軍による、韓国民間人居住区への砲撃は、我が国国民に改めて「軍事的脅威」を認識させることになった。また尖閣諸島への中共の侵略行為は、あらためて国民間での自衛隊のあり方や、国軍としての位置づけについての、議論を活発化させる契機になった。

自衛隊は世界でもトップクラスの予算を使い、有数の装備と高い士気を合わせ持つ、練度の高い軍隊であるが、憲法の制約上、軍事組織ではなく、行政組織の極大解釈的な組織としての権限しかないのが実情である。

このような極東情勢下にあるにも関わらず、菅民主党政権は、沖縄普天間基地の移設問題に有効な手立てを打つことが出来ない。冷戦以後は北朝鮮はもとより、中共人民解放軍への抑止としての、米軍であり沖縄への海兵隊の駐留なのである。沖縄での反米基地運動はかつてはソ連が組織し現在では、中共の統制下にあるという議論は現実味を帯びてきている。一方保守派の中にも基地撤退を唱える反米主義者も多く存在する。日本の現在のような国防米国依存では、真の自主独立はならないという、保守派の願いも共感するところである。

そこで本稿の主題「米国の軍事支配から独立できるか!」であるが、筆者は短期的( 10 年程度)には No!であり、中長期的には「そうしなければならない」という、極めて不明帳な回答しか出来ないのが現状である。それは現在の米軍の予算、装備、技術、情報は世界で群を抜いており、その世界一の軍隊との同盟という最高の関係を毀損してまで、軍事的に独立する合理性もないと感じる。短期的に No!というのはそういう意味である。特に現在米国が行っているRMA(Revolution in Military Affairs)におけるNCW(Network-Centric Warfare)では、もはや他国の追隨を許さないほどの時間と予算を使い圧倒している。

それらは軍事技術覇権と日本の防衛―標準化による米国の攻勢軍事システムエンジニアリング―イージスからネットワーク中心の戦闘まで、いかにシステムコンセプトは創出されたかで網羅されている。海上自衛隊のイージス艦はこれらのシステムに完全にリンクしているし、航空自衛隊の戦闘機も同様である。

さらにこれらの技術が、カスタマーである我国自衞隊には、技術移譲されずブラックボックス化していることが問題だ。そこには米国における調達管理制度の問題が潜んでいるという。米国の調達コンセプトは透明化されており、国民にも広く公開されている。そのコンセプトとは、
  1. 基本概念の洗練
  2. 選択肢の比較検討
  3. 技術開発
  4. システム開発と実験
  5. 運用と維持
の 5 段階からなる。共同で兵器開発を行う場合は、当該国が軍事的脅威はなにか、そしてそれらに対し共同で軍事行動を行うことを前提に、作戦ドクトリンを策定して(第 1 段階)、共同で兵器を開発しなければならない(第 2 段階)。

もし我国が米国へ兵器開発で影響力を行使する場合には、最低でも第 2 段階からの関与が必要となる。ミサイル防衛システムに於いて我国は、 1999 年からイージスシステム搭載艦との運用が前提の SM 3 導入を検討していた。

しかし北朝鮮のミサイル攻撃に対する要求性能を主張する我国海上自衛隊と、極東方面軍の基地防衛に対する要求性能を主張する米海軍との共同開発は、困難を極めた。結局海上自衛隊 SM 3 によるミサイル防衛ではなく、航空自衛隊配備のPAC 3 を選択せざるを得なかった。また統合作戦運用に欠かせないリンクシステムは、現在リンク 16 で衛星を経由した通信システムに依拠しているため、我国は米国の技術隷下にならざるを得ないのである。さらに戦術レベルだけではなく戦略レベルに置いても米国やアングロサクソン諸国の情報ネットワークからの情報提供がなければ正しく迅速な判断を下すことが出来ない。

以上のように米軍抜きでは北朝鮮は愚か、中共のミサイル攻撃にも対処できないのが、我国自衛隊の現状であり、国防なのである。これらの装備の更新は、予算の関係上経済的な要因にも影響を去つるが、概ね 10 年であると考えられる。

本日、今からそれを始めれば10年後に自主防衛の足がありは構築できる可能性はある。そのためにはまず国民意識の大改革が必要であり、拙稿は微力ながらでもそれに貢献したすればと祈念する。