米韓FTA締結 ―韓国はいつ条約を破棄するのか
米韓FTA発効へ 国内調整手続き
韓国議会が与党の強行採決で米韓FTAを批准した。韓国メディアによると、「損害額」は、農・水産業分野を最大として15年間に約12兆6683億ウォン(約8870億円)。産業界全般では明暗が分かれる見通しが示されている。韓国に不利な分野では今後10年間で年平均約686億~1197億ウォン減少するとみられている。
「米韓FTA批准は無効」 ソウルで1万人が反対集会
1万人余りが集まり、韓国国会で与党が強行可決した米国との自由貿易協定(FTA)に反対する集会があった。参加者らは「批准無効、李明博(イ・ミョンバク)(大統領)退陣」と連呼。繁華街に向かおうとしたところで警察が放水で鎮圧にかかり、一時騒然となった。
国民の間ではこんな行動も見られる。
米韓FTAが国会通過、ネット上の「売国ソング」に話題沸騰
米韓FTAの批准案がハンナラ党によって強行採決されたことに対して、最大野党の民主党側がFTAの無効化を宣言し、市民らによる反対デモが行われるなど、韓国内では反発が高まりつつある。一方、インターネット上では「FTA売国ソング」という風刺曲が登場して、話題となっている。
様々な交渉があったと思われるが肝は巷間で云われている「毒素条項」であろう。では毒素条項とはなんなのか、ということになるのであるが、わかりやすく説明をしているサイトがあるので引用する。
(1)サービス市場開放のNegative list:
サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。
(2)Ratchet条項:
一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。
(3)Future most-favored-nation treatment:
未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。
(4)Snap-back:
自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。
(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement:
韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。
(6)Non-Violation Complaint:
米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。
(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。
(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。
(9)知的財産権を米が直接規制例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。
(10)公企業の民営化
何故に自国に不利なこのような条約を李明博大統領は強行したのであろうか。そこにはしたたかな韓国の生き残り戦略があると私は考えるのである。
購買力平価GDPの推移であるが、中国は約10兆1千億ドル。中国がこのままの勢いで経済成長を続ければ2013年にはアメリカを追い越すことになる。韓国は2011年予想で約1兆5千億ドルで中国の約1/7になる。―日本は2011年予想でインドに抜かれ第4位である―
韓国の主要輸出国は中国とアメリカで全体の約30%、輸入国は中国、日本、アメリカで約30%を占める。寡占企業による格差の拡大は深刻化している。三星電子は実にGDPの約20%を稼いでいる。実は韓国は人件費の安い中国と技術力の高い日本にはさまれ、経済は厳しい局面を迎えている。そこでアメリカ、EUとFTAを締結しそれらの寡占企業の生き残りを計ったとは云えないか。
韓国のグローバル化した三星、LG、現代などの財閥系以外の企業は技術力をつけてきている中国企業との競争に勝ち残っていくことは困難であろう。北朝鮮の状態も不安定で、崩壊の予兆もあり北朝鮮が中国へ飲み込まれる可能性は否定できない。
つまり今から100年以前と同様に発生する事態に自国で対応ができないのである。当時は清国やロシアを引きこんで日本と対抗したが、結局日本が韓国を引き受けて併合したように、今回は自らアメリカの胃袋の中に飛び込んで中国に併呑されることを拒否したということではないか。
何時の時代も覇権国とギリギリの外交を展開しながらその覇権国に依存する事大主義は現代にも発揮されている。李明博大統領は往年日本を翻弄した閔妃以上の強者なのかもしれない。しかしアメリカは厄介な国を飲み込んだものだ。
韓国議会が与党の強行採決で米韓FTAを批准した。韓国メディアによると、「損害額」は、農・水産業分野を最大として15年間に約12兆6683億ウォン(約8870億円)。産業界全般では明暗が分かれる見通しが示されている。韓国に不利な分野では今後10年間で年平均約686億~1197億ウォン減少するとみられている。
1万人余りが集まり、韓国国会で与党が強行可決した米国との自由貿易協定(FTA)に反対する集会があった。参加者らは「批准無効、李明博(イ・ミョンバク)(大統領)退陣」と連呼。繁華街に向かおうとしたところで警察が放水で鎮圧にかかり、一時騒然となった。
国民の間ではこんな行動も見られる。
米韓FTAが国会通過、ネット上の「売国ソング」に話題沸騰
米韓FTAの批准案がハンナラ党によって強行採決されたことに対して、最大野党の民主党側がFTAの無効化を宣言し、市民らによる反対デモが行われるなど、韓国内では反発が高まりつつある。一方、インターネット上では「FTA売国ソング」という風刺曲が登場して、話題となっている。
様々な交渉があったと思われるが肝は巷間で云われている「毒素条項」であろう。では毒素条項とはなんなのか、ということになるのであるが、わかりやすく説明をしているサイトがあるので引用する。
(1)サービス市場開放のNegative list:
サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。
(2)Ratchet条項:
一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。
(3)Future most-favored-nation treatment:
未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。
(4)Snap-back:
自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。
(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement:
韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。
(6)Non-Violation Complaint:
米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。
(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。
(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。
(9)知的財産権を米が直接規制例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。
(10)公企業の民営化
何故に自国に不利なこのような条約を李明博大統領は強行したのであろうか。そこにはしたたかな韓国の生き残り戦略があると私は考えるのである。
購買力平価GDPの推移であるが、中国は約10兆1千億ドル。中国がこのままの勢いで経済成長を続ければ2013年にはアメリカを追い越すことになる。韓国は2011年予想で約1兆5千億ドルで中国の約1/7になる。―日本は2011年予想でインドに抜かれ第4位である―
韓国の主要輸出国は中国とアメリカで全体の約30%、輸入国は中国、日本、アメリカで約30%を占める。寡占企業による格差の拡大は深刻化している。三星電子は実にGDPの約20%を稼いでいる。実は韓国は人件費の安い中国と技術力の高い日本にはさまれ、経済は厳しい局面を迎えている。そこでアメリカ、EUとFTAを締結しそれらの寡占企業の生き残りを計ったとは云えないか。
韓国のグローバル化した三星、LG、現代などの財閥系以外の企業は技術力をつけてきている中国企業との競争に勝ち残っていくことは困難であろう。北朝鮮の状態も不安定で、崩壊の予兆もあり北朝鮮が中国へ飲み込まれる可能性は否定できない。
つまり今から100年以前と同様に発生する事態に自国で対応ができないのである。当時は清国やロシアを引きこんで日本と対抗したが、結局日本が韓国を引き受けて併合したように、今回は自らアメリカの胃袋の中に飛び込んで中国に併呑されることを拒否したということではないか。
何時の時代も覇権国とギリギリの外交を展開しながらその覇権国に依存する事大主義は現代にも発揮されている。李明博大統領は往年日本を翻弄した閔妃以上の強者なのかもしれない。しかしアメリカは厄介な国を飲み込んだものだ。