日本国憲法の研究 ―合衆国憲法との比較 第5章

合衆国憲法の第5章は改正についての条項で、憲法の改正手続についての規定だ。

第5章[改正]

連邦議会は、両院の3 分の2 が必要と認めるときは、この憲法に対する修正を発議し、または、3 分の2 の州の立法部が請求するときは、修正を発議するための憲法会議を召集しなければならない。いずれの場合においても、修正は、4 分の3 の州の立法部または4 分の3 の州における憲法会議によって承認された ときは、あらゆる意味において、この憲法の一部として効力を有する。いずれの承認方法を採るかは、連 邦議会が定める。

但し、1808 年より前に行われるいかなる修正も、第1 章第9 条1 項および4 項の規定 に変更を加えてはならない。いかなる州も、その同意なしに、上院における平等の投票権を奪われること はない。

特徴的なのは合衆国国民が発議するのではなく、各州の議会にその権限が付与されていること。そして承認も各州の議会にあることだろう。「憲法の改正を国民投票で」と主張する人たちは合衆国憲法の手続きをどう思っているのだろう。日本国憲法は内閣の規定だ。合衆国憲法では第2章執行部の章で扱う事項だが、日本国憲法では第5章となる。

第五章 内閣

第六十五条  行政権は、内閣に属する。

第六十六条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

2項  内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

3項  内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

第六十七条  内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

2項  衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十八条  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

2項  内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

第七十条  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

第七十一条  前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

第七十二条  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

二  外交関係を処理すること。

三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。

五  予算を作成して国会に提出すること。

六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第七十四条  法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第七十五条  国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
67条、68条により議院内閣が組織されるのだが、特に67条2項の規定によって衆議院の過半数政党の代表が、首相に指名されることになる。私個人はこの条項が日本政治の混迷を助長していると思っている。議院内閣制は執行部門と立法部門の対立を未然に防ぎ、国家の運営をスムーズにするために、英国で考案された叡智なのだが、資本主義の精神とデモクラシーの未熟な日本では機能不全の原因になる。

さらに73条4の予算を作成し国会に提出すること、とあるが、この規程も政府がポピリズムに流される原因の一つではないだろうか。ようするに、使う奴に使いたい金額をつくらせてはいけない、ということだ。政府が税を上げ、徴収し、使わせ失敗しても、選挙で責任を取らない集団が、官僚組織ということだろう。