スキップしてメイン コンテンツに移動

小和田恒悪玉論を問う ―衆 - 外務委員会 - 1号 昭和60年11月08日 その2

引き続き、村田春樹さんが國民新聞に書いた記事「小和田恒悪玉論を問う」への激励投稿を続けたいと思う。さて国会会議議事検索システムで昭和60年11月8日衆議院外務委員会の土井たか子委員の質問に対する答弁を検証しよう。

前回、検証したように日中友好条約締結から約7年、いわゆるA級戦犯合祀からも約7年間、4首相によって21回の参拝が行われたにもかかわらず非難はなかった。それが突如1985年8月14日に非難声明を発表したことには、中国国内の政治状況が関係していることは、その後の歴史が物語っている。

この日の外務委員会で土井たか子委員は、日航機によるソ連FIRへの侵入事件をプロローグに、外務大臣の訪中前に後藤アジア局長が不自然に訪中をしたことについて質問してきた。土井たか子委員の質問は、その年の8月15日に中曽根首相以下閣僚が靖国神社に公式訪問した件を、中国側が非難していることへの対応に、飛んだのではないかという内容だ。それに対し後藤アジア局長はそれは関係ないと答弁するのだが、かなり苦しい答弁になっている。

土井たか子委員はさらに安倍外務大臣にもその舌鋒を向け、
さて外務大臣、中国の靖国に対する抗議というものについて、これは内政干渉だというふうなことを発言する人がおるんですね。しかし、日中共同声明の六項を見たり、日中平和友好条約の一条一項を見てまいりますと、そこに言うところの内政干渉には当たらないと私は思うのですが、 後略
に対し、安倍外務大臣は、
中国側が、初めからそうした内政干渉とかそういう意図でもって、あるいはそういう気持ち、立場で日本に対して注文をつけたということではもちろんありません。
と中国側の意図を忖度すると、さらに土井たか子委員は、
日本は中国に対して侵略戦争を行い、大変多大の被害を与えたという過去の事情があるわけですけれども…後略
決め付けを質問する。すると安倍外務大臣は、
過去、日本が中国あるいは中国の民衆に与えた大変大きな犠牲というものに対しては、日本としては深く反省をして、その反省の上に立って日中関係というものを進めていかなければならない、こういうふうに思っています。 後略
そこで土井たか子委員は、
これはやはり中国に対して日本は侵犯した、侵略をしたという事実に基づくところの被害が中国側にはあったという事実関係に相なると思われますが …後略
と一方的に事実認定してゆく。さらに、
国際的に日本は中国に対して侵略をしたということが是認されておる、国際的それは認識である、このことを日本もはっきり認めなければならぬ、こういう関係になるわけですね。  東京裁判で「平和に対する罪」という概念が新しく出てきているわけですが、「平和に対する罪」というのは内容は一体どういうものなんですか。外務省いかがでしょう。
と誘導するのだが、ここまでの安倍外務大臣、後藤アジア局長の答弁は、中曽根首相の靖国神社参拝を日中間の外交問題にしたくない政府の意図がでてしまい、質問者の追求をある程度是認してしまえばそれで終わるだろうと楽観視していたのではないだろうか。そういう自民党政府側の意図がある中での小和田条約局長の答弁になる。

○小和田政府委員 極東国際軍事裁判所の条例で「平和に対する罪」というものが規定されまして、それに基づいて被告が起訴されたわけでございますけれども、その中で訴因の第二十七というのがそれに当たりますが、中国に対して侵略戦争が行われた、これが「平和に対する罪」を構成するという規定がございます。

○土井委員 それは、極東国際軍事裁判所条例の中にも明記がされているところですから、今局長がお答えになったとおり、中国に対して侵略戦争を行ったということに対する罪である、具体的に言えばそういうことに相なるかと思うのです。そうすると、東京裁判自身に対しては、日本はこれは認めているわけですね。また、東京裁判に対しては国として、政府として、それを是認するという立場にあるわけですね。いかがですか。

○小和田政府委員 土井委員御承知のとおり、日本国との平和条約の第十一条に規定がございます。「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」云々という規定がございまして、ここで極東国際軍事裁判所の裁判を受諾するということを約束しておるわけでございます。

○土井委員 受諾するということになると、条約に対しては遵守するという義務が日本としてはございますから、したがって、平和条約の十一条に言うところで、はっきりそのことに対しては認めているという立場に日本の政府としては立つわけですね。日本の国としては立つわけですね。これを再確認します。

○小和田政府委員 ここで裁判を受諾しているわけでございますから、その裁判の内容をそういうものとして受けとめる、そういうものとして承認するということでございます。

○土井委員 この東京裁判、極東国際軍事裁判所において戦争犯罪人として処罰されることのためには、戦争を引き起こした、侵略戦争を行ったということで処罰されているわけであります。侵略戦争というのは、先ほど外務大臣がおっしゃるとおり、国際的にこれは犯罪ということに相なるかと思われますが、いかがで ございますか。

○小和田政府委員 一般論として申し上げますと、極東軍事裁判の評価については学問的にはいろいろな意見がございますけれども、先ほども申し上げましたよ うに、国と国との関係におきましては、日本国政府といたしましては極東軍事裁判を受諾しているわけでございます。その裁判の過程におきまして、先ほども申 し上げましたような「平和に対する罪」ということが起訴理由になっておりまして、その訴因の第二十七で、被告が中華民国に対し侵略戦争並びに国際法、条 約、協定及び保証に違反する戦争を行ったということが挙げられておりまして、御承知のような判決が出ているわけでございますので、そういうものとして政府は受けとめておるということでございます。

○土井委員 したがって、侵略戦争は国際的に犯罪であるということを認めるということに相なりますね、もう一度お尋ねしますが。

○小和田政府委員 この極東軍事裁判において問題になった戦争あるいはこの被告の行動につきましては、それが極東軍事裁判所に言うところの「平和に対する罪」を構成するという判決、そういう裁判を受諾した、そういうものどして認めたということでございます。

○土井委員 ポツダム宣言というのがございますね。ポツダム宣言を日本が受諾したということ、これはイコール敗戦ということに相なったわけでありますが、 このポツダム宣言の十項というところに「一切の戦争犯罪人」云々というのが書かれております。「平和に対する罪」で裁かれた者は、当然この中に含まれますか、いかがでございますか。

○小和田政府委員 御質問の趣旨を私、正確に把握したかどうかよくわかりませんが、ポツダム宣言十項には御指摘のとおり「一切の戦争犯罪人に対しては、厳 重なる処罰を加へらるべし。」という規定がございます。我が国はポツダム宣言を受諾しておりますので、この内容を受諾したということでございます。

○土井委員 そうすると、その内容を受諾したと言われる「一切の戦争犯罪人に対しては、厳重なる処罰を加へらるべし。」と書いてあるその「一切の戦争犯罪人」というのは、「平和に対する罪」で裁かれた者は当然これは含まれるということになるわけですね。

○小和田政府委員 前後関係が逆になりますけれども、ポツダム宣言を受諾いたしまして、その後の事態におきまして極東軍事裁判所が設立をされて裁判が行わ れた、こういうことでございます。その極東軍事裁判所の裁判の過程におきまして、「平和に対する罪」として裁かれたわけでございますので、ポツダム宣言十 項に言っておりますところの戦争犯罪者の処罰の規定が具体的に実施されたものとして、極東軍事裁判を受けとめるということでいいのではないかと思います。

○土井委員 いや、それは解釈の経緯についての御説明でございましたが、結論とすれば、時間的には相前後するけれども、ポツダム宣言の十項に言うところの「一切の戦争犯罪人」は「平和に対する罪」で裁かれた者は当然含む、こういう理解でよろしゅうございますね。

○小和田政府委員 委員の御質問の趣旨を私、正確に理解していないかもしれませんのでお許しいただきたいのですが、ポツダム宣言の第十項に言っております 戦争犯罪人の処罰、それが具体的に実施に移されたものとして極東軍事裁判というものが位置づけられると思いますので、その意味におきましては極東軍事裁判 の裁判の結果というものは、ポツダム宣言第十項に言っておりますところの戦争犯罪人の処罰に相当するものであると理解しております。

○土井委員 そうすると外務大臣、中国側に公式参拝の説明として、参拝は決して軍国主義の道を歩まぬという日本の決意を変更するものじゃないというふうに 言われているわけですが、この説明では今の問題に対してちょっと的外れになってくるのですよ、今私がそういう御質問を申し上げて答弁をいただいた経緯から いたしますと。中国何からすれば、侵略戦争で親や子供や自分たちの身内が大変殺されて、まだその悲しみ、憎しみというものは消えていない、そういう人たち がたくさんおります。そういう中で、総理を初めとして、侵略戦争を引き起こした戦争犯罪人が祭られている場所に公式参拝することは許せないということ、こ れは当然の問題じゃなかろうかと思われますが、外務大臣いかがでございますか。

この後はまた安倍外務大臣が、首相以下閣僚の靖国神社公式参拝に対しての答弁をするのだが、本稿の趣旨からは外れるのでその検証は又の機会に譲ることとする。

さて、小和田恒条約局長の答弁の何処が保守派の逆鱗に触れたのだろうか。村田さんの記事では、「日本は東京裁判の判決を受諾した」と答弁すべきところを「裁判そのものを受諾した」と答弁し不当な東京裁判を認めてしまった、ということのようだ。その部分を再度検証してみよう。

小和田条約局長は土井たか子委員の質問に、日本国との平和条約の第11条を引用している。
「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」
原文を参照してみると、
Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan.
"judgments" の訳語として保守派諸氏はおそらく、裁判そのものではなく諸諸の判決を受諾したというべきだったということだろう。小和田局長は外務省条約局長として公式訳である、連合戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、と引用している。いくつかの訳を検証してみよう。データベース『世界と日本』日本政治・国際関係データベース 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室 [文書名] サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)を確認してみる。
日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課 した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている物を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及 び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半 数の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。
やはり、「法廷の裁判」としている。ここで村田さんの文章を確認すると、保守諸氏は「小和田は東京裁判の判決を受諾した」と言うべきところを「裁判そのものを受諾した」と答弁した、と憤っているわけだが、小和田局長はそのように発言してはいない。正確には「極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し」という外務省が訳した規定を引用したに過ぎない。「言った」のではなく「引用した」のだ。

私は英語の専門家ではないが、裁判所であれば、tribunal だろうし法廷ならcourt ではないだろうか。実際に、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷は、International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Court となっている。この場合の "judgments" は「判決」のことであり、"judgments"と複数なので諸判決と言うよりは「裁判」と訳したほうが良いのではないだろうか。外務省もそういう意図で訳しただろうし、小和田局長もその意図で引用しているのではないだろうか。おそらく保守派諸氏は「極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判」という日本語の「裁判」を前後の文脈を確認ぜず、「東京裁判」という略称における「裁判」と勘違いし、またそれを又聞きした人が「裁判(東京裁判)を受諾した」などという答弁はけしからん、となったのだろう。

この日の質疑では小和田局長の答弁よりむしろ、問題は安倍現首相の父君であられる、安倍外務大臣の方にあるように思う。それは中曽根首相以下閣僚の靖国神社公式参拝に対する非難はむしろ中国国内の政治状況の変化によるもので、日中共同宣言や日中友好条約を根拠にするものではないことを答弁すべきだった。

村田さんがこの文章を5月3日の憲法フォーラムで配布していた意図は、
更に(小和田氏)悪玉論者に問いたい、国家公務員は任命の時に「日本国憲法を遵守し不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓」っている(職員の服務の宣誓に関する政令昭和41年2月10日政令第14号)、反日憲法を遵守している公務員が反日姿勢をとってもあたりまえではないか
という一文に伺える。

憲法によって組織される議会及び政府、地方公共団体であり、そこに奉職する公務員は憲法を遵守する義務がある。彼らが憲法に規定に忠実であれば、反日的な政策でもそれを実行しなければならない。あるいは進んで反日的は政策を立案しなければいけない。なぜなら日本国憲法はそれまでの日本を、すべて破壊するために、日本人が書いた原案を元にしたとはいえ、GHQが草案をしたからである。
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この文章の主語は「日本国民は」だが、日本語の一般的な用法では3人称だろう、通常憲法は国民からの政府への命令というのが、通説であるから「我々は」となるのが普通だ。すこし足りない文言を付け加え、訂正するとこの文章の真意が見えてくる。
第九条  (我々合衆国政府は命令する)、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争及び、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄すること
○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この文章は自衛のための戦争をも認めてはいない。国権としての戦争とは、国家の権利としての武力の発動つまり、交戦権を否定している。自衛権は受動的交戦権なので、それまでも認めないといっている。国際紛争の手段に武力を行使できないのなら、侵略という国際紛争には武力を使用できないということだ。つまり、日本国憲法がある限り、いずれ日本(社会あるいは共同体としての)は日本国政府によって滅ぼされるだろう。それが村田さんのメッセージだと私は忖度した。

週間アクセスランキング

日本国憲法の研究 ―合衆国憲法との比較 前文

これから日本国の新憲法草案を提案しよう。どうしてそう思ったかは単純だ、今の日本国憲法は近代憲法の要件を満たしていないと思われるからだ。近代における国家は主権者である国民の国家形成への強い意志によって成り立っているとする。―するとしたのはもっと奥深い部分では違うと考えているが、近代に対応するためにそう仮定することにしよう。

近代思想において国家は、たとえ国民がひとりでも、国民意志があれば形成することができるとされる。しかしそれは利己的な個人意志ではない。五箇条の御誓文で公論と示された、意志を国民主権では民意というのであって、それがなければ近代国家は存在しないのである。さらにその意志は個々人の中にある不条理で熱い志であり、それを顕現しあるいは不当な隷属の強要から擁護されなければならないと考えている。

そして近代における憲法はその国家を統治する権力を制限するために制定するものであり、国民から政治権力への手紙であり、もっと強く表現すれば命令書として機能するのもである。よって国民が必ずしも従うべきものではないという性質のものである。
統治体というのは国際的には近代国民国家が国際関係を維持するため、またはその関係が破綻した場合に起きる紛争を解決したり、戦争を遂行し条約を締結するための代表府である。同時に国内においては共同体秩序を維持発展させるために制度や法律を制定する立法府、制定された法律をもとにそれを執行する行政府、そして行政が正しい手続きで行われているかを監視したりあるいは手続きの瑕疵を判断する裁判所などの組織のことである。

しかしこれらの組織は主権者である国民の自由を拘束したり法律を不当に行使したりする可能性があるので主権者は組織に対し、してはいけないことと、積極的にしなければならないことを文書によって命令する、それが憲法の本質なのである。そういう視点をもって世界最初の憲法らしい憲法であるアメリカ合衆国憲法と戦後アメリカの占領下制定された日本国憲法を比較してみよう。

アメリカ合衆国憲法(日本語訳)
前文
われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにアメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する。The Constitution o…

国際関係論で論じられる理想主義

リベラリズムほど解釈が多様にある言葉はないと思う。日本語では自由主義と訳される場合が多いのだが、昨今では自由主義とリベラリズムは対立する政治姿勢ともいえる。よって自由主義をリバタリアニズムと呼ぶのが一般的になりつつある。本稿の場合はリベラリズムを社会自由主義的な用法、ようするに国際関係論で論じられる理想主義として論じることにする。

20世紀の戦争 20世紀は戦争の世紀と呼ばれるように産業革命による技術革新が戦争を巨大化、無慈悲化させた。世界は巨大化・無慈悲化する戦争に対して、一定の規則を締結したが、その後に勃発した第一次世界大戦は大規模かつ無慈悲な消耗戦によりヨーロッパ社会に大きな衝撃を残した。

第一次世界大戦の塹壕戦や化学兵器の使用は、ただ敵を消耗させるための戦略で、それまでの戦争とは様相が大きく変化した。戦争は国家が軍に命令して、軍が名誉をかけて行う営みから、国家国民全体で行う営み全体戦争つまり総力戦へと変容した。

パリ不戦条約(戦争抛棄ニ関スル条約)は大戦のような悲惨な戦闘を二度と繰り返さないために交戦国、非交戦国も含めて63カ国が署名した。目的は戦争の違法化、特に侵攻戦争の違法化を目指したが、最終的には侵攻戦争を非難するにとどまった。


貧困が戦争を起こす もし社会が現状で固定されるとしたら、現在比較的幸福な人はいいが、もし不幸な人はどうだろうか。それはその人の希望を奪い去ることになる。国家同士の戦争もある一面では現状に満足できない国家と、それを阻止しようとする国家の営みといえる。

第一次大戦後ヨーロッパの比較的裕福な人々の間で戦争が二度と起こらないように、家族友人の死、あるいは戦争による破産などの不幸をなくすには、どうしたら良いか考えられたのは自然なことだ。そして彼らは結論した。「貧困が戦争を起こす」。

大戦中ロシアでは革命が起こりソ連邦が誕生する。国民(ソ連に国民がいたかは定かでないが)に貧困のない平等な生活を提供する統治体の出現に、ヨーロッパのエシュタブリッシュメントは期待と不安の眼差しを向ける。
リベラリズムの誕生 フランス革命の惨劇を経験しているヨーロッパの裕福な人達は、現状を維持しながら戦争を防止する政治体制の確立を急いだ。そのような背景でリベラリズム理論が誕生することになる。その理論は金持ちはそのまま、貧乏人はもう少しお金持ちにすることだ。

日本国憲法の研究 ―合衆国憲法との比較 第1章

近代憲法は、主権者である国民の意志として、組織される政府に対する命令書なので、前文は、その意志を表現したものがふさわしい。そしてその目的を明確にする必要がある。さらにその目的のために、憲法を制定するわけなので、そういうことを頭に入れたうえで、再び前文を読むと、合衆国憲法は、

われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここに アメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する。
目的意志がシンプルかつ明確に表現されている。これと比較して、日本国憲法における国民意志もしくは達成したい目的は、

政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。に色濃く現れ、

これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
が次にくる。なぜわざわざ一切の憲法と法令と詔勅と断る必要があるのだろうか。ここにこの憲法を制定した意志があるのではないだろうか。そして最後には、

国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

目的を達成することを、宣言命令するのではなく誓ふ。さらに誓ふ対象も明記されていない。我々日本国民は、誰に対して目標を達成することを誓ふのだろうか。 これに答えを出せる憲法学者や国会議員が、我が国にはどれほどいるのだろうか。国民はそれを疑問とも考えていないのだろか。

第 1 章はその意志を具体化する、そして目的を達成するための第一歩ということだ。最重要なことを最初に申し述べているのである。アメリカ合衆国にとって最重要なことは法の支配、法による秩序であり、日本国では天皇―スメラミコトによる秩序―これをしらすという―であるということだ。大日本国憲法では、

大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

と統治の根拠となる天皇が過去、現在、未来に渡つて、日本国と日本民族の秩序の源であることを示している。この場合の統治とは伊藤博文が解説するように、しらすであり現実的な権力、うしはくと厳密に分けなければならないのである。

合衆国憲法は合衆国の秩序は法によって護られるゆえ、第 1 章では立法府についての規定が列記される。一方、日本国憲法では天皇についての条項が…

年次改革要望書

サイトで偶然みつけた原文の、いわゆる「年次改革要望書」だが、TPPと比較してみても面白い。アメリカの戦略なのか執念なのか、はたまた信仰なのか、1994年からもう20年くらいやってる市場開放交渉だ。我国政府も辛抱強くそれに対応していることがわかる。

TPPとはなにか ―GATT・WTO体制から考えるTPP

TPPというのはWTOが認めるGATT体制の例外で、自由貿易協定や関税同盟などの地域貿易協定のことだ。そのことについての議論が国会の場でもあまりされていないように思う。おがた林太郎元衆議院議員のブログそもそもFTAとはというエントリーがあり、自由貿易協定の根拠はガット24条だということを知らない議員が多いと指摘している。

経済産業省の説明では自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)と関税同盟(Customs Union)を総称して地域貿易協定としている(RTA: Regional Trade Agreement)が、これらはGATT・WTO体制の例外として認められている協定で、それを規定しているのがガット24条という事になる。経済産業省のHPに関税及び貿易に関する一般協定、GATTの翻訳が掲載されている。
この協定の適用上、
(a) 関税同盟とは、次のことのために単一の関税地域をもつて二以上の関税地域に替えるものをいう。
(i) 関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十 条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除く。)を同盟の構成地域間の実質上のすべての貿易について、又は少くともそれらの地域の原産の産品 の実質上のすべての貿易について、廃止すること。
(ii) 9の規定に従うことを条件として、同盟の各構成国が、実質的に同一の関税その他の通商規則をその同盟に含まれない地域の貿易に適用すること。
(b) 自由貿易地域とは、関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条 及び第二十条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除く。)がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃 止されている二以上の関税地域の集団をいう。 TPPも含む地域貿易協定の根拠は24条にある。つまりTPPにも最恵国待遇が適用されるということだ。一応経産省のHPから最恵国待遇のPDFにリンクを張る。

WTOはその前進であるGATT(General Agreement on Tariffs and Trade) 関税及び貿易に関する一般協定が機関に昇格したものだが、実は国際通貨基金、世界銀行と並びブレトン・ウッズ体制の枠組みとして発足する…

TPPを締結できるか ―日本国憲法から考える

日本国憲法はその制定過程に疑義があるが、陛下の御名御璽のもと、施行されたのであるから、現在の政府はそれを遵守しなければいけないことは当然だ。しかし今回TPPについての議論を憲法の論点から整理をしながら思うことは、憲法を国会議員が全く意識していないし、ましてや遵守など微塵もされていないことに愕然とする。条文は、
第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 つまり、政府関係者は尊重擁護する義務があるのだが、自らの権限範囲つまり既得権擁護の議論にしか終始していないことには悲しみを覚える。

まずTPPなどの多国間協定は名は協定だが国家間の約束であるから、条約法に関するウィーン条約で定義される「条約」である。
第二条 用語
1 この条約の適用上、
(a) 「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。 さらに関税などの通商に関わる条約を通商条約といい、現在はWTO・GATTで規定されている。日本国憲法では、条約などの外交交渉は、内閣の専権事項である。
第七十三条 
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。 しかし、内閣は事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とするとあるように、締結した条約の批准は国会の権限になる。国会が批准しなければ国内的な効力は発生しない。

日本国政府は世界貿易機関を設立するマラケシュ協定を締結批准しWTOの構成国である。これは憲法の九十八条第2項の規定により国内法を改正して対処しなければならない。
第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。 しかし憲法の条規に反する如何なる法律、命令、詔勅、及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないとあるように、もし内閣が事後承認を要求した場合、締結した条約は国際的な効力を発生させるとされるのだが、国内的…

北朝鮮は日本の脅威ではない

北朝鮮の核開発問題は、日本にいろいろな教訓と示唆を与えてくれる。現在日本は、米韓と共に北朝鮮と対峙しているが、日本は、北朝鮮となぜ敵対しているのか、本当の敵は北朝鮮なのかという根本的な命題は、マスコミはじめ識者でも語られないままだ。今回はその辺を整理しよう。


北朝鮮問題の歴史的経緯 朝鮮民主主義人民共和国建国 1910年8月29日、大韓帝国は、日韓併合条約を専制君主である皇帝純宗が裁可することで、大日本帝国との合邦国となった。1945年4月12日、米国は、大日本帝国敗戦後の朝鮮半島統治に関して38度線での分割統治を提案する。1948年9月9日朝鮮民主主義人民共和国の成立は、その年の8月15日大韓民国の成立とともに、朝鮮半島における米ソの対立をより明確にすることになった。

共産主義による世界統治の実現のため、1950年6月ソ連及び、1949年に建国した中華人民共和国の支援を受けて、38度線を越境し大韓民国に進攻戦争を開始して朝鮮戦争が勃発する。大韓民国に駐留していた米軍を中心に国連軍―正式な手続きを経ていないので実質は国連派遣軍若しくは多国籍軍、が組織され、これを迎撃することになる。



朝鮮戦争 1950年6月25日宣戦布告なしに38度線で北朝鮮ソ連中国連合軍の砲撃が開始され、10万を超える兵力が38度線の越境を開始する。当時の韓国軍は兵力約11万人で装備は脆弱であった。さらに、北朝鮮のスパイ掃討戦や軍内部のスパイ粛清で士気は疲弊していた。米国及び国連は動揺するが、6月27日には国連安保理で北朝鮮を侵略者と認定して、その行動を非難する。さらに軍事行動の停止と軍の撤退を求める「国際連合安全保障理事会決議82」を賛成9反対0:棄権1の全会一致で採択した―ソ連は欠席。
韓国軍の崩壊と国連軍の敗走 韓国の李承晩大統領は、6月27日南朝鮮労働党関係者の処刑を命じ、韓国軍や韓国警察によって共産主義者の嫌疑をかけられた20万人から120万人に上る民間人を裁判なしで虐殺した―保導連盟事件。同時に、ソウルを放棄して水原に遷都した。このとき漢江にかかる橋を避難民ごと爆破した―漢江人道橋爆破事件。これにより漢江以北には多数の軍部隊や住民が取り残され、韓国軍の士気がさらに下がることになる。

国連軍を指揮した、マシュー・リッジウェイ将軍は、退却する韓国軍が放棄した装備は、数個師団だったと述べ…

農協は必要か ―農業保護政策は農家保護ではなく、農林水産省OBとJA職員の保護にすぎない

この冬、北海道にずいぶん出張したのだが、その時聞いた話題を提供しようと思う。

通州事件の体験記 ―気の弱い人は讀まないでください

通州事件は 、1937年(昭和12年)7月29日に発生した事件で、冀東防共自治政府保安隊(中国人部隊)による日本軍部隊・特務機関に対する襲撃と、それに続いて起こった日本人居留民に対する虐殺事件である。その体験記がある。讀むのも恐ろしい体験が綴られているのだが、歴史的事実を知るには貴重な記録であるので本誌の読者にも紹介する。あまりも惨たらしい体験記なので気の弱い人は讀まない方がいいと思ふ。
日本人皆殺しの地獄絵 私は大分の山の奥に産まれたんです。すごく貧乏で小学校を卒業しないうちにすすめる人があって大阪につとめに出ることになりました。それが普通の仕事であればいいのですけど、女としては一番いやなつらい仕事だったので、故郷に帰るということもしませんでした。そしてこの仕事をしているうちに何度も何度も人に騙されたんです。小学校も卒業していない私みたいなものはそれが当たり前だったかも知れません。それがもう二十歳も半ばを過ぎますと、私の仕事のほうはあまり喜ばれないようになり、私も仕事に飽きが来て、もうどうなってもよいわいなあ、思い切って外国にでも行こうかと思っているとき、たまたまTさんという支那人と出会ったのです。

このTさんという人はなかなか面白い人で、しょっちゅうみんなを笑わしていました。大阪には商売で来ているということでしたが、何回か会っているうち、Tさんが私に『Sさん私のお嫁さんにならないか』と申すのです。

私は最初は冗談と思っていたので、『いいよ。いつでもお嫁さんになってあげるよ。』と申しておったのですが、昭和七年の二月、Tさんが友人のYさんという人を連れて来て、これから結婚式をすると言うんです。そのときは全く驚きました。冗談冗談と思っていたのに友人を連れて来て、これから結婚式というものですから、私は最初は本当にしなかったんです。

でも、Yさんはすごく真面目な顔をして言うのです。Tさんは今まで何度もあなたに結婚して欲しいと申したそうですが、あなたはいつも、ああいいよと申していたそうです。それでTさんはあなたと結婚することを真剣に考えて、結婚の準備をしていたのです。それで今日の結婚式はもう何もかも準備が出来ているのです。とYさんは強い言葉で私に迫ります。

それでも私は雇い主にも相談しなくてはならないと申すと、雇い主も承知をして今日の結婚式には出ると申すし、少しばかりあっ…