国民が知っておきたい近現代史  ―日韓併合から満州事変まで

明治維新の意義を再確認したのだが、明治期を通して我が国は米国の侵略の後にやって来た、北方露国の侵略に悩まされることになる。維新後国軍を組織し、陸軍は仏国式(後独国)、海軍は英国式を取り入れる。当たり前のことだが、敵国が米国と露国なのであるから両国の助けは借りないということだ。

我が国はメキメキと力をつけ日清日露戦争をかろうじて勝利するまでに至る。しかし米露の脅威は去っていったわけではない。朝鮮半島をめぐり露国とは日露戦争を戦ったわけだが、日露戦争後も満州全域には露国軍―のちソ連軍が駐留しているのである。右の図は日本が朝鮮を併合したあとの東アジア地図であるが、ますます欧米列強のアジア支配は増すばかりである。
特に英国は日本と同盟を結んでアジアにおける権益を露国から守ろうとしたわけだが、日本軍が予想のほか屈強であり、特に海軍力は自国の極東域に維持できる勢力を超えて強大になりつつあることに警戒感を募らせる。一方消極的だが露国側につき戦争を支援した仏国は日本への敵視を強めることになる。露国を挟んで敵対した英仏両国だがここに利害が一致することになる。蘭国も永年の同盟国英国と共に東アジアの植民地が日本の脅威にさらされると警戒感を強めるのである。

清国は康有為の明治維新をモデルにした改革はあったがその統治能力は失われ人心は荒廃していった。1912年孫文等によって辛亥革命が勃発するも結局袁世凱による独裁となってしまう。その革命には日本の黒龍会など多くの民間人が大陸で活動し、また資金を提供している。彼らに共通する精神は、列強に蹂躙された清朝末期の状態から自主独立を果たし、支那と日本で東アジアから欧米列強を追い払い、各国の独立を果たしたいとうものであった。

実は同様なことが維新間もない頃、朝鮮半島を舞台としてもあった。その代表が福沢諭吉であろう。福沢は毎年朝鮮からの留学生を自費でよんでいる。福沢は民族の独立は言葉からとばかりに、15世紀の李氏朝鮮4代世宗国王が公布した「訓民正音」(훈민 정음,Hunmin Jeong-eum)で新聞を造ることを奨励した。官民多くの日本人が朝鮮粗独立のため尽力した。にもかかわらず大院君、閔妃一族や高宗帝などの「事大主義」に奔走され、ついに併合という最悪の手段に出ることになる。朝鮮半島の安定なくしては我が国の独立と安全はないからである。それは地図を見れば一目瞭然だろう。

日本の大正時代、南には四股淡々と日本侵略を企む米国フィリピンがあり、支那は辛亥革命以後の内乱中であり、満州後には露国(ソ連)が進駐している。特に明治以後敵対している露国と米国に北と南を抑えられ、大陸から突出している朝鮮半島がその緩衝地域になっていることが一目瞭然であろう。

日本は首都東京をはじめ、名古屋、大阪が太平洋側に立地しているので、大陸を敵正面とすると、太平洋は側背となる。ハワイとフィリピンの位置関係から南洋諸島域がいかに戦略的に重要な海域かがわかると思う。そしてフィリピンの北側には台湾が位置しフ米国フィリピンへ睨みをきかしていることがお分かり頂けるであろう。

我が国は日露戦争以後満州に居座る露国を追い払うことができないので、少なくとも支那大陸には友好的でなくとも敵対するような国家が現れることは避けたかったのである。先に多くの民間人が、孫文等を支援した所以である。我が国の生存は朝鮮半島と支那大陸にあったのである。

この後支那の内乱は蒋介石の北伐を契機に終息を迎えるかに見えたが、列強はアジアを国際政治の最前線へとしてしまうのである。独国はソ連を牽制するため支那を利用しようと蒋介石軍に軍事顧問を派遣する。一方我が国は北伐後の中共合作により、共産化する国民党蒋介石に警戒感を抱くことになる。この時毛沢東共産軍はソ連の影響下、蒋介石国民党軍は独国国防軍の影響下にあったと云える。しかし中共合作後はソ連の影響力が増すことになる。もともと親ソ的な独国国防軍であるので、北伐以後は日本と敵対することになる。

大陸のソ連化をうけて我が国は支那と満州の分断を計ることになる。例えば以下は遣唐使で有名な唐の版図であるが、最大領域こそ現在の中国東北部(満州)に及んでいるが、そう長期には維持できていない。

中興の強国「民」の版図だが、北方をタタールに抑えられ北京より北方へ進出していない。歴史上、支那王朝が北方の満州地域を版図に治めたことはあまりないのである。有名な万里の長城より北は北狄、つまり野蛮人の住むところだったのである。

我が国は支那大陸が共産化するに及んで独立維持のため、まだ秩序定まらぬ満州域に進出することになる。日露戦争、鉄道警備のため駐留していた軍は1万数千足らずであるが、ソ連軍の搾取略奪や馬賊の横行で苦しむ満州域の住民の圧倒的支持を得て満州事変を起こすのである。支那大陸がソ連化したことはABCD包囲網の完成であり、日本が極東の地で孤立化することに等しいからである。

世界は大不況の只中であり、経済はブロック化し先進諸国が高い関税で自国の経済を保護してる状況である。ではなぜこのように日本は世界から嫌われる事になったのか。次稿はその点を分析してみたい。

人気の投稿